フリーランス
ツイッターを見ていて、もうこれは、責務とばかりにみた映画です。
タイの映画で「フリーランス」という、もうなんだか、お仕事って大変すぎるねって話です。
こんな仕事の仕方をしている人なんて、都市伝説なんじゃないかと思うくらいで、
映画における奇跡の出会いと、いっこだけの魔法を叶えるためのその他のたくさんの方程式。
iPhoneの呼び出し音がヤんなっちゃうなって思うくらいのお仕事の忙しさ。
少し、先走りすぎましたね。ストーリーの説明を。
フリーランスのグラフィックデザイナーの彼が主人公で、バリバリと仕事をこなします。
何日も徹夜しても平気な強靭さで、最初は4日半ほども徹夜をしてなんとか日々の仕事をこなしているんです。
そしたら、身体に発疹ができてしまって、病院に行くんです。
そしたらとっても綺麗なでも、キャリアの浅い女医さんで。その発疹の検査をされるんですね。
背中に見つかったけれども、他にはないか、とあちこちと見られちゃう。
緩んでしまった腹筋を見られて凹むのもつかの間、ちんちんまで見られちゃう。
手と足と同じ付属肢よって言われて。そのシーンの奥に、年配の女性の看護師さんがにやにやっと笑ってるのがいい雰囲気。
女医さんも、研修医みたいなもんで未熟な若い方で、なんだか主人公はこの人のことが気になっちゃう。
治療をするたびに会うのが楽しくなっちゃう。なんかいいですね、こういう、ささやかな、ほのかな関係性。
タイだからなのかな、とっても雰囲気がいい感じなの。
病室を出るとき、お別れをするとき、いろんなシーンで、手を合わせて挨拶をする。
大事な文化が残っている感じです。映画の中にはこういう真実がうつるから嬉しいもんだ。
僕たちも日常生活の中で大切にしなくっちゃいけないことがいくつかあるけれども、些細なものから抜け落ちる。
その些細なものって、本当に大事で、挨拶だとか会話だとか、文化を大切に思わなくっちゃいけない。
って、なんと話に思いながら見てました。
ストーリーとしては、アレルギーを治したい先生と、治したいけど、仕事上そう簡単には従えない彼の話。
薬を飲んで、夜の9時に寝るだなんて、そんな生活は簡単じゃない。
薬を飲むと眠くなっちゃうから、仕事にならない。仕事を誰かに振り分けるわけにもいかない、フリーランスだから。
この映画の面白いところは、健康のために寝ようと思うと全く眠れなくって一睡もできないのに、
仕事やんなきゃ、って、何時間かだけ寝ようと思って薬を飲んだり眠ったりすると、
あっという間に起きる時間通り越して締め切りの時間直前まで時間がワープするところ。
いいセンスしてますこれ、ギャグだもんな、地獄だけど。心地よいドラムラインが焦りに彩りを添えます。
コミカルにどんどん病状は悪化していきます。
けれども、仕事も順調に進んでゆく。
病状は悪化しているけれど、仕事は進んでる、それを仕方なしとする主人公と、
自分の体を大切にしてほしいと願う先生と。
先生は、先生になったきっかけとして身内なり愛する人の喪失を経験してるんじゃないだろうか。
こういうのって、観てる人にはすっとわかるもんなんかな?
セリフに書いてなかった場合に、読み取れるもんなんだろうか。
最初に、主人公の友人の親族の葬式から物語が始まって、
最後のあたりで主人公の妄想のお葬式のシーンが入るんです。
「あぁ、俺はもう死ぬんだな、葬式には誰を呼ぼうか、」っていう入りからの妄想。
この物語が目指すものってなにかがよくわかるところなんだけれども、
主人公もおバカさんなのが可愛らしくって。
その女医さんと仲直りしたくって、プレゼントを買おうとするんだけど「理系でアートな作品ある?」
って店員さんに聞くところおバカ。そこで、モノリス進められるところがおもろい。
ようやっとプレゼントを購入して、診察室に向かおうとする彼の背中に、いい雰囲気の音楽が流れるんだけど、
この映画のいいところってのは、ストーリーは優しく静かに流れてくんだけど、
音楽の使い方が、心地よく派手だったり、おもしろいんです。
いい雰囲気の音楽が突然カットアウトされて、案内された診察室にはいつもとは違う男性の医師。
カットアウトされ具合がたまらなくいい。常套手段なんだけれど、いい。
とある大きな仕事を失敗して正月に仕事を干されちゃうんだけれど、これを機会に、
って療養の休暇を取るんです。海に向かって叫ぶシーンがあるんだけど、そこで叫ぶのが自分の名前。
女医さんの名前じゃないんだ、ってちょっと面白くなった。
自分の気持ちに気づいていないのかな?なんてこっちが心配になっちゃいそうなくらいの純情さで、
発疹が癒えた時に「治ったら会えなくなる」って思い悩んでた主人公が、
なんだか振られたみたいになって「これは、失恋未満だ」みたいな言い聞かせ方をするところがおバカで好き。
おバカ、おバカ、って書いているんだけれど、全編通して感じられるのが、純情。
なんだろうなぁって思うんです、丁寧に人を思う気持ち。
主人公の仕事の相棒にこっちもわりかしお綺麗な女の子がいるんだけれど、ここにも男女の友情みたいなものが感じられて。
国民性なんかなぁ、手を合わせてきちんと挨拶をする宗教文化。
そういうところなのかなって、そういうゆっくりとした時間の流れ方を感じるいい映画でした。
カメラが手持ちで固定せずに取っているところがわりと多くってそれがなんかいい感じでもあり。
あとは、主人公が来ているシャツが、ちょいちょいダサいのかなんなのか、気になる。
総じて、いい映画だったと思いました。面白かった。
後半結構きついシーンがあったりするんだけれども、うん。よかった。
ツイッターで紹介してくれてた深夜枠の映画だったけれども、わざわざリモコンの電池入れ替えて
眠っていたハードディスクに録画するってところまで挑戦してみて良かったと思う。
アンテナ張っといて得した。
タイの映画ってこういう、優しいのが多いんかなぁって思ったけど、
ジージャーちゃんが戦意を喪失した敵に、悪魔のようにせっせととどめを刺していくチョコレートファイターがあったな。
全然優しくないや。阿部寛さん出てたんだ、とちょっと改めてびっくり。
あと、心霊写真、って怖そうなやつも見つけちゃったんで、レンタルとかあったら見てみよう。
チョコレートファイター 心霊写真
- 2017.02.22 Wednesday
- 映画
- 10:02
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- by 白井宏幸